OEHHA 溶接ヒューム規制とパブリックコメント: 米国製造業・輸出企業への影響とは
カリフォルニア州環境保護庁(CalEPA)の環境衛生危険評価局(OEHHA)は現在、溶接ヒューム(Welding Fumes)に関連する有害大気汚染物質(HAPs)や工場排出規制についてパブリックコメントを募集・検討しています。これらの規制動向は、製造業、金属加工業、自動車部品メーカー、医療機器メーカーなど、米国市場へ輸出する企業に大きな影響を与える可能性があります。

5/20/2026 (CalEPA カリフォルニア州環境保護庁 2026年5月8日発表)
化学物質の掲載意向通知:溶接ヒューム
本措置は、以下に説明する **「労働法による掲載要件」**に基づいて提案されるものです。 OEHHA は、溶接ヒュームがこの要件による掲載基準を満たすと判断しました。
溶接ヒューム(Welding Fumes)とは?
溶接ヒュームとは、溶接作業時に発生する金属粒子およびガス状物質の混合物を指します。一般的に、クロム、ニッケル、マンガンなどの金属成分を含む場合があり、長期的な吸入暴露による健康リスクが指摘されています。
労働法の要件による掲載についての背景:
Proposition 65 に基づく化学物質の掲載の一部は、労働法上の要件に由来しています。
健康安全法典第25249.8条(a)は、カリフォルニア州労働法典第6382条(b)(1)の規定を Proposition 65 に組み込む形で取り込んでいます¹。
この仕組みの下では、国際がん研究機関(IARC) によって特定された一定の物質について、Proposition 65 上の 「発がん性があることが知られている物質」 として掲載することが法的に義務付けられます²。
労働法典第6382条(b)(1)が対象としているのは、IARC によりヒトまたは動物に対する発がん性が特定された物質です³。
こうした掲載に関する具体的な運用規則は、カリフォルニア州法典第27編第25904条において、有害物質評価局(OEHHA) により採択されています⁴。
Proposition 65 の施行を所管する機関として、OEHHA は、特定の化学物質について掲載が法的に必要かどうかを個別に評価しています⁵。
----- 脚注 -----
1. 健康安全法典(Health and Safety Code)第25249.8条(a)
2. 同条は、労働法典の指定を根拠として Proposition 65 上の発がん性物質リストへの掲載を求めている
3. 労働法典(Labor Code)第6382条(b)(1)
4. カリフォルニア州法典第27編第25904条
5. OEHHA(Office of Environmental Health Hazard Assessment)は Proposition 65 の主管庁として掲載判断を行う
OEHHA の判断
カリフォルニア州環境健康有害物質評価局(OEHHA)は、溶接ヒュームについて、Proposition 65 の目的において**「カリフォルニア州で発がん性が確認されている物質」**として掲載するための要件を満たしていると判断しました¹。この判断は、カリフォルニア州法典第27編第25904条(b)(1)に基づくものです。
OEHHA は判断の根拠として、国際がん研究機関(IARC) による評価を参照しています。IARC は、2018年に公表した「IARC 発がん性評価モノグラフ第118巻『溶接、三酸化モリブデン、インジウムスズ酸化物』」において、溶接ヒュームをグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類しました²。さらに IARC は、溶接ヒュームについてヒトにおける発がん性について十分な証拠があると結論付けています³。
----- 脚注 -----
1. カリフォルニア州法典(California Code of Regulations)第27編第25904条(b)(1)
2. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume 118(2018年)
3. 同モノグラフにおける総合評価結果
なぜOEHHAは溶接ヒューム規制を強化しようとしているのか
カリフォルニア州環境健康有害物質評価局(OEHHA)は、溶接ヒューム(Welding Fumes)に含まれる有害物質による健康被害や環境汚染リスクへの対応を強化しています。特に、有害大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants:HAPs)への関心が高まっており、製造業や金属加工業における排出管理が重要視されています。
米国市場向けに製品を製造・輸出している企業や、カリフォルニア州で事業活動を行っている企業にとっては、当該物質の使用実態や暴露経路を再確認し、警告表示、契約条件、サプライチェーン上の責任分担を含めたコンプライアンス体制を点検する好機となるとの見方が示されています。
また、米国では Proposition 65 を巡る訴訟リスクが事業上の重要な考慮事項となることも多く、形式的な掲載であっても、実務上の影響を踏まえ、早期に対応することが求められます。

